父の思い
父は何年も ただ働きをしていた。
社員の給料を自分の給料で立て替えていた為、いつも母に文句を言われていた。
相当 経営が厳しい状況なのだろうなとは思っていたけれど、まさか借金があるなんて...
F井さんには、「国で裁判を起こしていて、近いうちに必ずお金が入るから、もう少し返済を待ってほしい」と話していたようだった。
B型肝炎給付金の事だと すぐにピンときた。
2年前、「ダメ元で依頼してみたら?」と私が言った時には 父は全く乗り気ではなかったのに、昨年の秋、急に自ら進んで動きだしたので、先のことを考えて家族のためにお金を残そうとしてくれているのかなと思っていたけれど、仕入金の返済に当てるつもりだったんだね...
誰にも言わず 一人で抱え込んで、どんな思いで毎日を過ごしていたのだろう。
父の気持ちを想像すると、涙がこみ上げてきて止まらなかった。
F井さんが帰った後、事務所で一人 私は号泣した。